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向町にある世照観音(天徳寺)は、最上三十三観音の番外札所となっています。
ご本尊は「聖(子安)観世音菩薩」になります。
ここはいつの頃からか世照観音と称されており、元文年間以前までは最上札所番外観音として、向町の月蔵院という天台宗の寺に安置され、多くの巡礼者の参拝をえておりました。天保年間に月蔵院は不幸にして寺族死に絶えて後継者もなく、廃寺となってしまったため、日頃観音信仰の厚い町民が法燈の絶える事を恐れて、主として天徳寺の檀徒及び一般の信者の方々が相謀り、天徳寺に御遷座して安置することとなりました。
本尊仏「子安観音菩薩」は、その丈7寸で台座に坐し、約40センチの厨子に安置されていたようです。残念なことに、昭和17年の大火で安置堂の衆寮とともに焼失してしまい、代わりに高さ約50センチの子安観音立像が作像され、観音堂を兼ねた位牌堂に安置されてきました。
天徳寺では12年に一度行われる子年のご開帳に合わせ、本尊を新たに作像しました。高さ約30センチ、両手で赤子を優しく抱いた子安観音像です。淡い青や緑に彩色した衣、金色に輝く光背など、寺に残る文献や資料により焼失した本尊を忠実に再現しております。
観音様は三十三身に姿を変え、人々を救済するといわれております。慈愛に満ちたまなざしで赤子を見つめる子安観音坐像。その姿は温かく、参拝者の心を安げてくれます。
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